新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態措置が解除され、”新しい生活様式”の模索が始まっております。
われわれ芸術に携わる者は、皆それぞれが自分たちの仕事に誇りを持って、今こそ自分自身を啓発し、互いの連携を強めるべきだと思います。
10年程前に私は『舟と琴』という作品を作りました。古事記の仁徳天皇の事績の中に「枯野(からの)」という話があり、それをそのまま詞章にして音楽に作ったものです。
一本の高い樹があり、ある時これを切って舟を作ったところ、大変に速く進む舟ができた。「枯野」と名付けられたその舟で毎日淡路島から宮殿に良い水を運んでいたが、やがて壊れてしまった。その舟で藻塩を焼いた。けれども芯は焼けずに残った。それをお琴に作ったところ、お琴の音は七里四方に響き渡った。
太古より命を繋いできた巨木には自然の魂が宿っています。焼け残った芯は樹の魂そのもので、自然の魂の芯は音楽や文化にあることの象徴とも言えましょう。
われわれはこのようなメッセージを受けて現代に生きています。今のような困難の時にこそ、古代からの自然の魂を伝承された人間であることを自覚して、文化の大切さを世の中に伝えていきたいと思う次第です。
現代邦楽作曲家連盟
理事長 今藤 政太郎